Report comment

割合に温順(おとな)しいお末を置いて、あの厄介者のお作を腰に付けたは、流石(さすが)に後のことをも考へて行つたものと見える。 お志保に言はせると、いよ/\彼の寺を出ようと思立つたのは、泣いて、泣いて、泣尽した揚句のこと。尤(もつと)も、其前の晩、烈しい夫婦喧嘩があつて、継母はお志保のことや父の酒のことを言つて、奈何して是から将来(さき)生計(くらし)が立つと泣叫んだといふ。継母が末の児を背負(おぶ)ひ、お作の手を引き、進は見慣(みな)れない男に連れられて、後を見かへり/\行つたといふことは、近所のかみさんが来ての話で解つた。恐怖で目を閉じる彼女に、幽霊は「私の愛しい娘」と囁き、続けて〈クリムゾン・