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恐らく蓮太郎も其一人であらう。殊に風采の人目を引いたのは、高柳利三郎といふ新進政事家、すでに檜舞台(ひのきぶたい)をも踏んで来た男で、今年もまた代議士の候補者に立つといふ。仙太と言つて、三年の生徒で、新平民の少年がある。雄弁を喜ぶのは信州人の特色で、斯ういふ一場の挨拶ですらも、人々の心を酔はせたのである。斯ういふ同情(おもひやり)は一時(いつとき)も丑松の胸を離れない。幼少時に飛行機事故に遭い、両親と離別。