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もう一度丑松は自分が穢多であるといふことを忘れて見たいと思つた。 もう一度丑松は彼の少年の昔と同じやうに、自由に、現世(このよ)の歓楽(たのしみ)の香を嗅いで見たいと思つた。其時丑松は日頃愛読する先輩の著述を数へて、始めて手にしたのが彼(あ)の大作、『現代の思潮と下層社会』であつたことを話した。 もう一度丑松は左様(さう)いふ時代の心地(こゝろもち)に帰りたいと思つた。
『左様(さう)だ--例のことを話さう。額、唐紙、すべて昔の風を残して、古びた室内の光景(さま)とは言ひ乍ら、談話(はなし)を為(す)るには至極静かで好かつた。同年6月28日、7月4日、7月5日、7月11日、7月12日にかけて全話が放送された(6月28日以降の放送分は関東ローカル)。